『夜のピクニック』 恩田陸:著
夜のピクニック

ついに来たか、この日が。
貴子は坂を降りながら考えた。
高校最後の行事。
彼女は眩しそうに空を見上げる。
そして、あたしの小さな秘密の賭けを実行する日が。




貴子の通う高校の最後の一大イベント「歩行祭」。
朝の8時から翌朝の8時まで夜中の数時間の仮眠をするのみで、後はほとんど歩き続けるという、ちょっと変わったイベントだ。

でも、3年生は本気で受験モードに入る前の高校生活最後のイベントとあって、みんな気合が入っている。

一見さめた感じの雰囲気の貴子と、同じクラスの融。
ふたりは異父兄弟で一言も言葉を交わしたことがなく、それでいてずっと相手を意識せずにはいられない関係だった。

「歩行祭」と“貴子と融の関係”という二つの軸にそって物語りは進んでいく。
貴子は自分の中だけで、この最後のイベントに小さな賭けをして望む。
一つ目の賭けはひょんな形であっけなく勝って(?叶って?)しまい、そして、次の賭けは。。

貴子と融の不思議な関係だけでなく、二人を取り巻く友人たちがとてもいい!あぁ〜高校生だなぁって、これを読んだら絶対に高校時代の友だちを思い出しちゃう。

そして「歩行祭」。
本当に、こういう行事をやっている学校があるかどうかは別にして、
読んでいると高校時代のいろんな思い出がよみがえってきます。
なんでもない出来事や会話がなんて特別な意味を持つのでしょうね。

青春
子供ではなくて、でも大人にもなりきれなくて、
いろんなことでもがいて、たくさんの知識を吸収して、思い切り汗をかいて、自分の将来には限りない可能性が満ちていると信じられる時代。

そういうときのこと懐かしく思い出しちゃうのです。

そして、貴子たちが「まだまだだ」とか「これからが本当に大変なんだ」と思いながら歩いた道のりをなんだか一緒に歩いている気がしてしまって、最後のほうになると「あぁ本当にこれで終わってしまうんだなぁ」ってちょっとしんみりしたりして。。

今、貴子たちと同じくらいの年代の人も
ちょっと前、もしくはずっと前(笑)に貴子たちくらいだった人も
共感できる部分が必ずある、身近な喜びや哀しみに彩られた本でした。

歩行祭が終わる。
何かが終わる。みんな終わる。
頭の中で、ぐるぐるいろんな場面がいっぱい回っているが、混乱して言葉にならない。
だけど、と貴子は呟く。
何かの終わりは、いつだって何かの始まりなのだ。






この作品は第2回本屋大賞を受賞しています。
本屋大賞と言うのは「全国書店員が選んだ一番読んでほしい本」だそうです。
ちなみに第1回受賞作が小川洋子さんの「博士の愛した数式」。第3回は「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」です。

どの作品も映画化されていますが、うわさによれば「夜のピクニック」は予想ほどの興行ではなかったとか。。。
そうかもなぁ〜って思いました。
だって、これは小説だからいいのだと思うのです。
そもそも「歩行祭」という舞台で、ふたりの高校生の思いが語られていく話なので、映像化したときインパクトはあまりないと思うのです。というか、地味なイメージ。
読んでこその「夜のピクニック」だと思うのです。そう思いませんか?





今年は私の中では「国内小説読書キャンペーン」でした。
(キャンペーンて・・・(*≧m≦*)ププッ)
で、恩田陸さんという作家さんはもちろん以前から知ってましたが、
今年続けて読んでかなり好きになった作家さんです。

これからの作品もぜひ読み続けたいと思います。

テーマ:読書感想文 - ジャンル:小説・文学

【2006/12/17】  この記事のURL | 国内作家名ア行 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
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